展覧会

肉筆浮世絵と江戸のファッション 町人女性の美意識



江戸初期から幕末までの美人画と、江戸の各時期の小袖や小袖模様の見本帳である雛形本を含む約60点を展覧。
前後期で大幅な展示替えを行います。

開館時間 :
10:00~18:00(入館は17:30まで)
休 館 日 :
月曜日(ただし10/12、11/23は開館)、10/13
出品点数 :
約60点
入 館 料 :
一般¥800、高大生¥500、小中生¥300
宿泊者無料、20名以上の団体は各¥100割引、
着物で来館のお客さまは半額
主 催 :
ニューオータニ美術館
監 修 :
長崎巌氏(共立女子大学教授)

関連イベント
■講演会 [ 終了いたしました ]
 『江戸町人女性のファッション~華やかさから「粋」へ』 講演会の様子
    講 師 長崎巌氏(共立女子大学教授、本展監修者)
日 時 10月25日(日) 14:00~15:30
会 場 アリエスの間(ホテルニューオータニガーデンコート5F)
聴講料 ¥500
 【要予約】 03-3221-4115(先着順)

■ギャラリートーク
    日 時 10月17日(土)、11月7日(土)
いずれも14:00~ 当館学芸員

浮世絵は、江戸の庶民層が生み出した美術のひとつです。
幕末までのおよそ200年の間、「浮世」、すなわちこの世の享楽的な世相を反映して移り変わる町方の風俗を、その時々に克明に描き出しました。 ことに女性を主題とした美人画は、その容ぼうのみならず、服飾描写までもが丹念になされています。 彼女らが身にまとう小袖の模様や質感は、現存する同時代の染織作品と比較しても、そん色ないほどの再現性をもって描き分けられており、絵師が、町人女性のファッションを熱心に観察、描写していたことが分かります。
本展では、江戸時代初期から幕末までの肉筆浮世絵の美人画と、現存する江戸時代の各時期の小袖や小袖模様の見本帳である雛形本を含む前後期約60点により、江戸ファッションの変遷を展観いたします。 江戸に花開いた町人文化の粋をお楽しみください。

展覧会構成

〔参考〕小袖の模様配置の変遷
長崎巌『日本の美術435 小袖からきものへ』(至文堂)p.88~89

17世紀前半
江戸時代初期寛永(1624~44)の頃までは、桃山時代までの形態的な特徴を引き継いだ小袖が広く用いられていました。
それは、着用の際、胴回りがゆったりしながらも襟元がほぼ隙間なく締まり、袖口からはひじ近くまで腕が出るというものでした。
しかし、模様は、この頃になると桃山頃までの左右対称を基本とした規則的で安定感のある構成から、モチーフの配置に片寄りの見られる動的な構成に変化していきました。 大谷コレクションやサントリー美術館の《舞踊図》などには、その様子をうかがうことができます。

無款《舞踊図》部分・重要美術品
紙本著色 六面
各63.0×37.1 cm
サントリー美術館、前期
無款《舞踊図》部分・重要美術品
紙本著色 六曲一隻 
各扇73.0×39.4 cm(ただし図は4図)
大谷コレクション、後期

寛文期
寛文期(1661~73)を中心に隆盛した「寛文小袖」は、桃山時代までのきものの影響を脱した江戸時代最初の流行意匠と位置づけられます。 その模様配置は、一層動的になり、インパクトの強いモチーフを広い空間にゆったりと、左右非対称に配置するものです。
ほどこされた模様は、動植物ばかりか器物や文字など多彩かつ機知に富んでおり、伸張する時代にふさわしいのびやかな表現を見てとることができます。

無款《花持美人図》部分
紙本著色 一幅
84.7×26.6 cm
出光美術館、前期
《黄綸子地雪輪竹模様小袖》きりんずじゆきわたけもようこそで
国立歴史民俗博物館、前期
寛文7年刊
『御ひいなかた』より

元禄期
元禄期(1688~1703)に入ると、「寛文小袖」では余白であった部分にまで模様を配した華やかな意匠が流行します。
その最たる特徴は、背面の左腰周辺にわずかな余白を残して橘、梅、桜、松などの立木や草花などを配していることです。
武家女性の小袖にあっては絞り染めや刺繍、摺り匹田といった伝統的な技法が用いられ、町人女性の小袖においては新たな技法である友禅染が採用されました。

菱川友房 《月夜弾琴図》部分
絹本著色 一幅 36.5×51.5 cm
大谷コレクション、後期
《黒麻地流水椿模様帷子》くろあさじりゅうすいつばきもようかたびら
個人、後期

18世紀前半から半ば
女性の帯は、17~18世紀にかけて次第に幅が広くなっていきます。
一説によれば(生川春明著『近世女風俗考』)、寛文末(1661~73)に2寸5分から3寸(7.5~9cm)だったものが延宝・天和(1673~84)には5~6寸(15~18cm)、正徳・享保(1711~36)には8~9寸(24~27cm)に広がったといいます。 その変化が小袖の意匠にも影響を及ぼしました。
幅広の帯によって小袖が上下に分断されることから、それをきっかけに、上下で小袖の色を染め分けたり、異なる模様を配するようになります。 やがては、上半身の模様を取り去り、腰から下のみに意匠をほどこす「腰模様」が生まれました。

宮川長春《小むらさき図》部分
絹本著色 一幅 89.0×39.0 cm
大谷コレクション、後期
《染分綸子地檜扇鉄線模様小袖》そめわけりんずじひおうぎてっせんもようこそで
国立歴史民俗博物館、後期

山崎龍女《美人図》部分
紙本著色 一幅 30.6×50.8 cm
大谷コレクション、前期
《染分縮緬地橘鶴菱模様振袖》そめわけちりめんじたちばなつるびしもようふりそで
個人、後期

18世紀後半から19世紀
腰から下の部分のみに模様をほどこす意匠形式は、更なる変化を見せます。
模様は次第に小袖の下方へと、その位置を低くしていき、宝暦(1751~1764)頃からは、裾まわりのみに模様を表す「裾模様」と呼ばれる意匠形式が加速度的に普及、中流町人女性の小袖意匠の主流となります。 「裾模様」は、模様を背面の裾から前身の裾へとつなげて表すものがほとんどです。
人から見えにくい狭い範囲に小さな意匠を配置するのは、この頃から町人の間で芽生えはじめた「いき」の美意識を反映しているのでしょう。

歌川国長《美人立姿図》部分
絹本著色 一幅
172.0×78.5 cm
大谷コレクション、前期
《白綸子地松竹梅模様小袖》しろりんずじしょうちくばいもようこそで
個人、前期

『新雛形曙梅』より 鳥居清長《詠歌弾琴図》部分
重要美術品
絹本著色 一幅
90.8×47.1 cm
大谷コレクション、後期
《鶸色縮緬地梅樹流水模様小袖》ひわいろちりめんじばいじゅりゅうすいもようこそで
個人、後期

総模様
帯幅が広くなったことをきっかけに「腰模様」から「裾模様」へと変遷した小袖意匠とは別に、幅広な帯にさえぎられても影響を受けない小袖意匠も出現しました。 小袖全体にまんべんなく模様を配した「総模様」がそれです。

懐月堂度辰《美人図》 部分
紙本著色 一幅 97.8×44.6 cm
大谷コレクション、前期
松野親信《見立紫式部図》部分
絹本著色 一幅 35.6×56.0 cm
大谷コレクション、後期

《白縮緬地垣楓模様小袖》しろちりめんじかきかえでもようこそで
国立歴史民俗博物館、前期 
《白綸子地竹垣松竹橘模様小袖》しろりんずじたけがきまつたけたちばなもようこそで
個人、後期



図版については美術館までお問い合わせください。

 museum@newotani.co.jp